鈴木 健太Kenta Suzuki
  • 東京応化工業株式会社
  • 先端材料開発一部 課長

2007年入社 先端レジスト開発に従事、2016年~2020年はベルギーの半導体技術のコンソーシアムIMEC出向、帰国後、高い顧客要望かつスピード感のある部署に属しながら開発本部全体のDX推進、顧客対応最前線でMI活用を模索する。

半導体製造プロセスの基幹材料である「フォトレジスト」分野で、世界トップシェアを誇る東京応化工業株式会社。80年以上にわたり研鑽を積んできた世界最高水準の微細加工技術と高純度化技術をコアに、グローバルな顧客密着戦略を展開し、進化し続けるデジタル社会を化学の力で支えるとともに持続可能な社会の実現に向けた事業を進めることで社会の期待に応えています。

同社では、2020年頃よりマテリアルズ・インフォマティクス(以下MI)導入の検討を開始し、2025年にmiHub®とコーチング支援を導入していただきました。その背景と今後の展望ついて、開発本部 課長 鈴木様、早川様、野口様、江原様、藤波様、斎藤様、内山様にお話を伺いました。

成功体験ゆえに根付いた社内文化が、変革の壁となる

まずは、貴社の事業概要や主要製品のご紹介からお願いいたします。

鈴木

東京応化工業は、半導体製造に不可欠な感光材料であるフォトレジストを主力製品とする化学メーカーです。同製品で世界シェアNo.1を獲得している当社は、フォトレジストを用いた微細加工を通じて半導体の微細化と高集積化を具現化しています。この技術的成果が、スマートフォンの小型化、長時間駆動、高速通信といった、デジタルデバイスの進化そのものを材料面から支える基盤となっています。

フォトレジストを用いた半導体加工の根幹をなすのがリソグラフィ技術です。当社は、最先端の微細加工で用いられるEUV(極端紫外線)リソグラフィをはじめ、各リソグラフィ技術に適した反応性を持つ材料を開発・提供することで、お客様の「さらなる高性能化」という飽くなき要求に応えています。

当社の最大の強みは、“顧客密着戦略”を通じた価値創造です。その本質は、いかなる難題に対しても頭ごなしに「できない」とは言わず、「どうすれば実現できるか」をお客様と共に徹底的に模索し続ける点にあります。一方的な製品提供ではなく、アイデアを出し合う「共創」のスタイルで技術的な壁に真摯に向き合う姿勢こそが、お客様との強固な信頼関係と現在の高いシェアを支える最大の要因だと考えています。

半導体業界を取り巻く環境や、当時の課題についてお聞かせください。

鈴木

当時の課題は、激変する市場環境への対応と、既存の社内文化に対する危機感という2つの側面にありました。

AIサーバーやスマートフォンに代表される半導体製品のサイクルは凄まじいスピードで進んでおり、これを支える当社には市場のスピードを超える開発速度が求められています。現場の若手を中心に、「デジタル技術による研究開発高度化の必要性」や「既存の開発手法に対する課題」といった強い認識は、すでに社内で生まれていました

しかし、当社には世界シェアNo.1という成功体験があるがゆえに、「これまでの方法こそが正解だ」という意識が社内に根付いており、変革に踏み出すには高いハードルがありました。「このままではお客様のスピードに追従できない」という危機感は感じていたものの、成否の分からない新技術の導入には、心理的にも実務的にも慎重にならざるを得なかったのです。さらに、変革を進める上では、時間とリソースのジレンマも大きな壁となっていました。MIへの取り組みは自前で着手していたものの、開発本部全体や全社的な活用を支えるだけの専門人財やノウハウは十分とは言えませんでした。「現在進行形のビジネスに即座に適用し、成果を出したい」という思いがある一方で、人財を一から育成するだけの時間的余裕はなかったのです。

miHub®×コーチングで、社内のMI・DX活動の底上げを目指す

MI導入のきっかけや、選定の経緯を教えてください。

鈴木

きっかけは、展示会でのセミナーに感銘を受けた経営層からの紹介です。miHub®は現場のエンジニア自身が普段の研究開発の中に組み込む形でMIを実践できるため、当社の課題を解決し、組織で活用できるのではないかという大きな期待がありました。また、現場での利用シーンが明確で、「どう使うか」というノウハウに重きを置いた開発姿勢に、他ツールとの決定的な違いを感じました。当社の業務の中心である組成最適化との親和性が高かったことも決め手の一つです。

最終的な後押しは、社内の積極的な反応でした。導入前に実施いただいたMI-6の講演会後のアンケートで、「早くMIを使ってみたい」「同じ開発領域でMIを活用していることを知って取り組む必要性を認識した」という声が多数寄せられ、現場の問題意識が可視化されたことが、決断の重要要素となりました。

斎藤 聖奈さんのプロフィール写真

斎藤 聖奈

Seina Saito

東京応化工業株式会社先端材料開発二部 技術主任

2022年入社。先端レジストの開発に従事。
顧客要望に応じた製品開発を担当。業務を通じて顧客のスピード感や要望の高さを実感し、効率的な顧客対応かつ革新的な製品の開発を目指すべくMI活用に努めている。

斎藤

講演で特に印象に残ったのは、私の担当分野であるレジスト開発で、実際にMIを活用されていたという成功事例です。普段の業務の際に考えていることがmiHub®上で、しかもプログラミングの知識なしで実践可能であると知り、非常に驚きました。

「プログラミング知識がないと使いこなせない」という思い込みがありましたが、「これなら自分たちの部署でも必ず活かせる、ぜひ挑戦したい」と考えが変わりました

藤波 哲郎さんのプロフィール写真

藤波 哲郎

Tetsuro Fujinami

東京応化工業株式会社先端材料開発一部 技師補

2018年入社。先端レジスト用素材の開発に従事。大学との共同研究や初期段階の開発を経験し、現在は顧客紹介を前提とした開発を担当。顧客の圧倒的なスピード感と品質要求を目の当たりにし、より効率的かつ再現性の高い素材開発の必要性を痛感。MIの活用に興味を持った。MI活用にあたっては、現場のニーズ念頭に、エンジニアの暗黙知を言語化できるよう努めている。

藤波

私が強く共感したのは、“属人化のリスク”についてです。社内でMIツールを内製しても、担当者の異動や退職とともにシステムが風化してしまうケースは少なくありません。そのため内製に固執せず、専門家によって継続的に改善・サポートされるソフトウェアを導入するのが、最良の策であるという話に深く納得しました。これによって、開発者は材料開発のよりクリエイティブなところに注力できると確信しました

鈴木

私たちだけで局所的にMIを推進しても、変革を全社へ波及させ、組織的なムーブメントを起こすのは困難です。だからこそ、MI-6の豊富なノウハウを教わりながら、組織の様々な部署やテーマで活動を並行して活性化させたいと考えました。

この目的を達成するため、開発本部全体のDX・MI活動を底上げする一気通貫の支援が必要だと判断し、miHub®とコーチングを組み合わせた支援体制の導入を決断しました。疑問や課題感に対し、「この仕組みを使えば解決できる」と確信できたことが、導入に至る大きなきっかけになりました。

miHub®とコーチングのセット導入後、どのように進められたのでしょうか。

鈴木

MI推進メンバーは、若手をベテランが支える「ペア体制」を採用しました。「新しいことに挑戦したい、現状を変えたい」という熱意を持つ若手が、「経験豊富なベテランの言葉やノウハウ」を引き出し、miHub®で可視化できるようにしたかったのです。このようなそれぞれの役割により、多くの企業が抱える「技術継承」のジレンマを解決することを目指しました。

また、MIが分野を問わず活用できることを実証するため、あえて様々な部署からメンバーを募りました。プロジェクトを通じて、普段接点のないメンバー間に横の交流が生まれたことも、副次的な成果です。

進行面では、アウトプットや課題をもとにMI-6と議論を行い、「次はどうすればより良い結果が出せるか」「それぞれの試行錯誤をした背景はなにか」を徹底的に話し合いました。そこで定まった方針で1ヶ月間実験と解析を行い、また次の議論に臨むというサイクルでプロジェクトを進めていきました。

写真左端の野口様、左から2番目の江原様、右端の内山様が、本取り組みにおけるコーチングメンバー

MI活用が常識を覆すきっかけとなり、エンジニアを成長させる

半年間のMI導入を通じて、研究開発に対する考え方や、業務プロセスに起きた具体的な変化についてお聞かせください。

早川 優さんのプロフィール写真

早川 優

Yu Hayakawa

東京応化工業株式会社先端材料開発二部 技師

2006年入社。先端レジストの開発に従事。
開発業務において、顧客要望に応じたレジストを提案するために種々のデータ解析をおこなっているが、加速する開発スピードに対応すべくMI活用を模索している。

早川

まず、コーチングのおかげでツールを使う心理的なハードルが下がりました。miHub®は、解析条件設定の自由度が高いがゆえに、「どう設定すれば最適か」と悩むこともありましたが、設定ごとの傾向や「今回はどちらが最適か、それはなぜか」といった具体的な助言のおかげで、迷いを解消できました。的確なアドバイスを実験に反映させる、効果的なサイクルを回せたのが非常に良かったです。

斎藤

定例ミーティングでの度重なる質問にも、常に迅速かつ丁寧な回答をいただき、深く理解できるまで寄り添ったサポートには大変助けられました。社内データの整理に予想以上の時間を取られ、当初は大変苦労しましたが、諦めずにトライアンドエラーを繰り返した結果、自分たちでは思いつかなかった組成のサンプルをお客様に紹介できました。

研究開発は多くの失敗を経て成功に辿り着くものですが、MIであってもプロセスを積み重ねることで成果が出るという、“研究開発の本質”を改めて実感できました。

写真左から早川様、斎藤様が、本取り組みにおけるコーチングメンバー

内山 愛海さんのプロフィール写真

内山 愛海

Ami Uchiyama

東京応化工業株式会社先端材料開発三部

2024年入社。パッケージ用レジスト開発に従事。
既存品の改良や、顧客要望に応じた製品開発を担当。レジスト組成に加え厚膜用プロセス条件検討を行っている。業務を通じてスピード感のある開発の重要性を実感し、より迅速な顧客対応を目指すためMIの活用を進めている。

内山

他チームと異なる「プロセスの解析」への適用には、当初不安がありました。しかし、具体的な解析の仕方を提案いただいたり、逆にこちらから「こういう変数を設定するのはどうか」と積極的に提案したりと、綿密な議論やアクションを重ねた結果、スムーズに進めることができました。

実は、私は以前から社内の「データのあり方」に課題を感じていました。社内には多くの成功事例があるにもかかわらず、データが整理・蓄積されず活用できていない状況を改善したいと考えていたのです。変数が多いため最適化はまだ試行錯誤中ですが、MIによる「データの可視化」には大きな手応えを感じています。特に、先輩方の「感覚」をデータとして可視化できたことで、自身の理解が深まり、周囲への説明やデータをもとにした議論の質も格段に向上しました。

野口 拓也さんのプロフィール写真

野口 拓也

Takuya Noguchi

東京応化工業株式会社エレクトロニクス材料課 技師

2011年入社。半導体パッケージ用接着剤や機能性フィルムの研究を経て、現在は半導体最先端プロセス向け洗浄液の開発に従事。業務効率化とデータ活用による製品開発を目指し、miHub®を活用した研究開発を実践するとともに、部門内への浸透を目指し活動している。

野口

miHub®は、私たちの部署と非常に親和性が高いと実感しています。私たちが扱う洗浄液などは組成がシンプルで、配合の微調整が性能に直結するため、MIによる最適化が極めて有効に作用します。実際に活用してみて、「これなら部署の全員が活用できる」と実感しました。

一方で、「もしツール単体での導入であれば、途中で頓挫していただろう」とも思いました。MIを活用するたびに新たな疑問が出てくるため、MI-6から定期的な助言をいただきながら取り組むコーチングが、MIの定着には不可欠だったからです。私自身の疑問点や実現したいことを言語化する良いきっかけにもなりました。

藤波

コーチングで助言を受け、miHub®での解析結果を細部まで精査してみると、認識が大きく変わりました。経験則では「変わらない」「無理だ」と考えていた条件が、実は結果に大きく影響しているなど、これまでの常識を覆す傾向が見えてきたのです。MIとは単なる効率化ツールではなく、“新たな視点を得てエンジニア自身が成長するプラットフォーム”なのだと、改めて捉え直すことができました。エンジニアの能力を高め、その結果として開発がより良くなるイメージです。

さらに、miHub®にデータ集約するために個人のデータを収集した結果、社内のデータ集約が一気に進みました。私は、“MI推進に伴ってDXが進む”という副次的な効果こそが、実は最も大きい成果だと考えています。

写真左から2番目の藤波様が、本取り組みにおけるコーチングメンバー

MI推進の「大使」として、全社に新たな文化を醸成していく

最後に、今後の展望とMI-6への期待をお聞かせください。

早川

今後は部門全体へMIを展開するフェーズに入り、私たちが伝える側に回ります。実際に手を動かして得た知見や苦労を糧に、MIを普及・定着させる役割としてリードしていきたいと考えています。

内山

先日の社内ポスター発表で事例報告したところ、部署を問わず多くの社員が集まってくれました。「プロセス解析にも使えるなら自分も試したい」という声も多く、社内での関心の高まりを実感しています。

今後はプロセス解析だけでなく、組成データも組み合わせて活用範囲をさらに広げていきます。その際、重要なのがコーチングで学んだ「解析の設定意図の言語化」です。「なぜその変数なのか」を論理的に説明し、自部署の他テーマへも適用可能であることを周知していくつもりです。

部署内にはまだ、「MIより自分で考えた方が早い」という懐疑的な声もあります。そうした人々にこそMIの真価を伝え、”その心を動かしたい”と強く思っています。

斎藤

今回の経験から、「部門全体でデータの形式を統一して蓄積すること」が、より効率的なMI活用に不可欠であると実感しました。今後は、コーチングで得た知見を共有してMI活用を広げ、新しい技術やサンプルをよりスピーディーにお客様へ提供していきたいと考えています。

藤波

私は、「MI推進の火を絶やさない」ことに注力していきたいです。これまではコーチングがペースメーカーの役割を果たしてくれましたが、今後は私たち自身でMIを推進し、継続できるかが問われます。自律的に取り組みを進めつつ、短期的な「成功実績」と、中長期的な「エンジニアの成長」。この両面をバランスよく周囲に示していきたいと考えています。

野口

今後はmiHub®を部署全体へ広げ、部署の習慣、ひいては「文化」にまで高めたいと考えています。実験データを蓄積・共有するサイクルが定着すれば、一人ひとりの解析スキル向上にも直結するはずです。

また、将来的には海外拠点への展開も計画しています。これまでは開発拠点が分かれていることで情報共有に課題がありましたが、miHub®ならその壁を乗り越えられます。グローバルな連携を実現するプラットフォームとして、大いに期待しています。

江原 亮さんのプロフィール写真

江原 亮

Ryo Ehara

東京応化工業株式会社エレクトロニクス材料課 技術主任

2023年入社。半導体先端プロセス向け洗浄液の開発を担当。国内外に開発拠点を持つ強みを活かしつつ、データ共有のさらなる強化が必要と感じている。miHub®を通じて国境を越えた情報共有を実現し、経験や知見を体系化してコミュニケーションツールとして活用し、効率的な開発体制の構築を目指している。

江原

海外のメンバーもMIに関心を持っており、現在は定期的に情報共有を行っています。今後は現地へ赴き、導入に向けた説明を行う予定であり、私たちが得た知見を海外拠点の仲間にもしっかりと展開していきます

今後は私自身がコーチングを行う立場になります。MI-6の丁寧な支援や「相談しやすい雰囲気作り」からは多くの学びがあったので、私もその姿勢を見習い、海外連携を含めて責任を持って取り組んでいきます。まずは急務である「miHub®によるデータの可視化」を進めますが、今後MIを社内にどう浸透・定着させていくかについても、ぜひ引き続きご教示いただきたいです。

鈴木

今回はコーチングを通じ、あえて多様な分野での実績作りを重視しました。身近な成果を目の当たりにしたことで、MIへの熱量が全社へ広がりつつあり、私の元にもリアルタイムで他部署から問い合わせが届いています。変革の「大使」として、今回のメンバーがMIを広めてくれたことを大変嬉しく思います。

現在、当社は2030年に向けて、デジタル人財の育成を目標に掲げています。今回のプロジェクトを経たメンバーは、少なくとも「自分はデジタル人財である」と胸を張れる自信を身につけてくれました。彼らは変革の「起爆剤」であり、育成の「芽」がここに生まれました。今後はその芽を大きく育て、周囲へ種を撒くように、デジタル人財の層をさらに広げていく活動を期待しています。

私は、エンジニアの共通言語は「数字」だと思っています。言語や世代、国や会社の壁を超えて、数字でなら語り合うことができます。 だからこそ、miHub®には単なる解析ツールにとどまらず、「数字を共通言語としたコミュニケーションプラットフォーム」としての役割を担っていただきたいのです。MIとは、まさにそうしたコミュニケーション活動の一つでもあると考えます。

そうしたコミュニケーションを活性化するものとして、我々はこのmiHub®をベースに組織全体で新たな文化を醸成していきたいと思います。

また、MI-6には現場経験者が多く在籍されているからこそ、私たちの課題感を深く理解していただいていると感じます。要望を出す前の「先を見据えた対応」や、迅速かつ真摯なレスポンスを通じて、「ここまで寄り添って伴走してくれるのか」と、サポートの手厚さを実感しました。

世の中では成功体験ばかりが語られますが、私は「失敗には再現性がある」と思っています。同じ轍を踏まないためにも、表には出にくい「失敗談」こそをご共有いただけると大変ありがたいです。MI-6には引き続き、新たな文化を醸成していくための手厚いご支援をお願いいたします。


鈴木様、早川様、野口様、藤波様、斎藤様、江原様、内山様ありがとうございました!

※掲載内容は取材当時(2025/12/5)のものです。

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