課題:性能に対する製造プロセスの主要因の明確化
リチウムイオン電池の高容量化として、シリコンは既知の材料の中で最も高い容量を有し、比較的低い作動電位を示すなどの利点があることから注目されている負極材料の1つである。
シリコンを利用した負極の実用化課題の一つに、リチウムイオンのインターカレーションと脱離に伴って起きる体積変化が非常に大きく、充放電サイクルによって構造破壊や分解が進むことがある。この大きな体積変化に関する課題の解決のために、サイズ効果により構造的破壊が起こりにくい高純度シリコンのナノ粒子が原料に利用されている。
しかしながらシリコンナノ粒子の製造において、高純度シリコンの湿式ビーズミルのよる粉砕工程時の摩擦によるシリコンナノ粒子の酸化劣化による電極性能の低下が疑われており、性能に対するプロセスの主要因の明確化とプロセス条件の最適化が求められている。
解決策:性能-構造-条件の連関を予測モデルを用いて解析
本テーマはベイズ最適化などの実験計画法を元にプロセス設計の探索範囲内において目標到達条件を含めて効率良く取得した25サンプルの検討データを用いて、製造されたナノ粒子の構造評価および品質管理項目の合格幅と各プロセスの単位操作の条件範囲を考察する。
評価項目として製造されたナノシリコン粒子を使用した負極材で測定した電池の初回充放電効率と300サイクル後の充放電効率維持率、またナノシリコンの構造評価・品質評価項目としてSi-NMRのピーク比率から算出したSi純度指標値、ナノ粒子スラリーの比表面積値などを解析に用いる。
プロセス因子はビーズミルのビーズ粒径、粉砕時間、周速、ビーズ充填量などのデータを利用する。
解析手順として、初めに電池性能因子を目的変数に、品質管理項目を説明変数に設定し、予測モデル解析を行うことで目標性能を満たすナノ粒子の構造因子の主要因を確認、またグリットサーチにより合格品質管理幅を確認し、メカニズムを考察する。その後、品質管理を目的変数に、プロセス因子を説明変数に設定し、同様の手法で主要因と各プロセスの条件範囲を解析する。
結果:着目すべき品質項目とプロセス条件の明確化
LASSO回帰モデルを作成し、そのモデルの重要特徴量から主要因を確認した。電池性能因子とナノ粒子の構造因子の関係について、電池の初回充放電効率にはシリコンナノ粒子の純度の高さが主要因であり、サイクル維持率にはナノ粒子の比表面積が主要因であることが明らかになった。
更に構造因子とのプロセス因子の関係について、シリコンナノ粒子の純度の高さはビーズミル初期工程のビース粒径と処理時間で主要因であることが明らかになった。
それらの予測モデルを用いて実施可能性のあるほぼ全ての条件を網羅的に予測した結果から、性能目標を満たすナノ粒子の品質値の範囲、またそれらを満たすビーズミルの製造条件の各操作の設定範囲が定量的に明らかになった。製造のために検証すべき条件を客観的・効率的に探索することにより、不要な実験検討を未然に削減することが可能になった。
今後はシリコンナノ粒子から電極作成までの後工程のプロセスにおいても同様に性能-構造-条件の連関をデータ駆動アプローチで明らかにし、全体設計の最適化に挑む。
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