課題:高屈折、高耐久性、高透明性の実現

有機ELやLEDを用いた面光源装置は、面発光体と発光面に設けられる光取り出しフィルムで構成されている。面光源装置は有機EL素子やLEDから発生した光を、粘着層および光取り出しフィルムを通して装置外へ射出する。このような面光源装置では粘着層が高い屈折率を有していると光取り出し効率を高める上で有利である。光取り出しフィルム用の粘着剤は様々な種類のものが開発されているが、高い屈折率を確保することができず、光取り出し効果が低下することや耐久性、透明性の点からも課題があった。そこで高い屈折率を有し、耐久性、透明性にも優れる粘着剤の開発を行うこととした。

屈折率、耐久性、透明性の観点から、候補となるアクリルモノマーと重合開始材、無機粒子、架橋剤などの添加剤を含めて配合最適化を行う。

初期データ数は18点あり、アクリルモノマーと添加剤を合わせた17原料とアクリルモノマーの重合時間と温度のプロセス条件2つを合わせた19個の条件を説明変数としてベイズ最適化を用いた条件最適化を実施した。

解決策:ベイズ最適化による解析と実験

本テーマでは、まず「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチを用いて、これまでにない条件で良好な結果が得られる可能性について検討した。探索範囲はこれまでの知見や思い込みに影響されすぎないように、明らかに目的変数に悪影響を与えると分かっている範囲を除き、広く設定することとした。また、アクリルモノマーの配合種類をコントロールするため、原料数制約を用いてアクリルモノマーの組み合わせと、1サンプルに配合する種類と数を限定した。さらに制約条件としてアクリルモノマーの合計が100になるよう設定を行った。

目的変数についてはどの程度まで高い値、もしくは低い値が出るか分からないため、初期設定は高く目指すものは最大化、低く目指すものは最小化を最適化設定として解析を行った。

ベイズ最適化で出す実験候補点は5点とし、思い込みを排除する観点から、5点全ての候補点について実験を行った。

結果:研究者の知見と解析を組み合わせて、目標を全て満たす条件を発見

「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチで解析と実験を4サイクル、20点の実験データを取得した時点で、これまでに得られた結果や研究者の知見を元にアクリルモノマー及び無機粒子の探索範囲を狭めた。また、本配合条件で目指せる目的変数の目標数値がある程度見えてきたと判断し、最適化設定に具体的な数値目標を入れる変更を行い、5回目以降の解析を実施した。

その後、7サイクル目まで解析と実験を実施し、合計32点のデータを取得した。合計50点のデータを得た時点で全ての目的変数が製品化に耐えうる数値を上回る配合およびプロセス条件を発見することに成功した。

図1. 評価サンプルの予測値と実測値の関係性

キーワード

  • ベイズ最適化
  • 配合とプロセスの同時最適化
  • データ解析と知見の融合

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