課題:研究者の経験に頼らない、微小変化で変動する評価項目の最適化
ホイップドクリームの開発では、流通や販売形態の多様化、エネルギーやサステイナビリティの観点から常温保存が可能、かつ良好な口溶けの開発が顧客から求められることが増えている。保存期間を長くするためには糖類を多くして静菌作用を強める。しかし、糖類が多く、かつオーバーランが低いと口溶けが悪化する傾向にあり、また甘味が強くなりすぎる。オーバーランの向上には乳化剤を活用するが、多すぎると口溶けなど食感に悪影響がある。組成物の構成のわずかな違いで評価が異なり、最適と言えるバランスの調整のためには知見のみならず、経験も必要となることが多い。最適な組成の調整を経験に頼らない、より効率的に開発する方法が求められている。
解決策:ベイズ最適化による最適化と予測モデルによる要因分析
今回のケースでは前試験で油脂や乳化剤、糖類などの種類を前試験である程度選定し、それらの配合量を最適化することとした。前試験で取得したデータセットは24点あり、「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチで各配合量を最適化することとした。
配合材料は17点あり、評価項目はオーバーラン、保形性など4点である。オーバーランは定量評価であるが、その他3点は定性評価である。特に、口溶けは社内のパネラー10名による官能評価を評点とし、その平均値が最終評価である。なお、油脂組成物からホイップドクリームを調整するミキシング条件は全ての実験で同一とした。
目標達成、もしくはある程度のデータ量が得られた後に蓄積したデータを用いて「モデル選択と探索範囲分析による実験点選択」のアプローチで特定の材料による評価項目への影響、すなわち要因分析にチャレンジすることを計画した。
結果:目標評価の達成とデータ解析と研究者知見の融合による要因分析
初回の解析結果を見ると、モデルの予測精度はオーバーランでR2が0.7程度あり、他の評価項目はこれよりも精度は低かった。そこで、10点の候補点を算出し、オーバーランの予測値が高いものから上位3点を選択して実験を実施した。評価した結果、オーバーランは予測値に近い結果が得られた。一方、離水耐性や口溶けは予測とは外れ、低い結果となった。2回目の解析でも同様にオーバーランの予測値が高い候補点を3点実験した。同様のサイクルをさらに2回実施し、目標としていた組成を4サイクル目で1点見出した。追加した実験データは12点である。
ここまでで蓄積したデータ、36点について、「モデル選択と探索範囲分析による実験点選択」のアプローチで要因分析にチャレンジした。オーバーランと離水耐性が乳原料2種の配合量によってどのように変動するか解析を行った。その解析結果と研究者間での議論の結果、乳原料に含まれるカルシウムの構成量が影響していることが示唆され、今後の開発の参考となる新規の知見を得ることができた。
キーワード
- 官能評価
- 要因分析
- データ解析と知見の融合
