課題:アルデヒド系香料を含有する液体柔軟剤の高透明度化配合検討

洗剤・界面活性剤市場においては、この20年で安定的に生産量・消費量が増加しており、中でも柔軟剤に関しては、消費者の清潔志向の高まりなどにより急速に需要も伸びている。その背景として、企業が香りの良さや肌触りなどを訴求した様々な製品を開発・販売し、多種多様な嗜好に合わせた選択が可能になったことが挙げられる。

最近では、柔軟剤自体の色の爽やかさを重視し、組成物の外観を透明または半透明にした柔軟剤の開発も行われている。中でもシリコーンとカチオン性ポリマーを併用した液体柔軟剤がよく知られており、シリコーン配合量を低減し、カチオン性ポリマーとモノアルキルカチオンのような特定の界面活性剤の併用により、さらっとした風合いの付与が可能である。一方でこの組成にアルデ ヒド香料が含まれている場合は、日光曝露条件下で柔軟剤自体が変色し、さらに香気も劣化することが分かっている。アルデヒド香料は、強い拡散力持続力、他の匂いを引き上げる役割があるため、柔軟剤開発において必要不可欠である。

そこで、本検討では柔軟剤の風合いを担保しつつ、香料による変色または香料の劣化が起こりにくい柔軟剤の組成検討を目的とした。

解決策:研究者の知見を探索範囲に反映したベイズ最適化による解析・実験

「ベイズ最適化の候補点から選択のアプローチ」により、外観変化、風合い、香気の3つの目的変数を同時に最大化する処方を見つけることを目的とした。外観変化、風合い、香気はいずれも官能評価で評価した(外観変化は1-4の4段階、香気は1-5の5段階、風合いは1-4の4段階)。いずれも3以上であれば合格とした。

説明変数は、酸化防止剤、香料2種(アルデヒド系香料とそれ以外の香料)、アミンまたはアンモニウム化合物、高分子、シリコン、ノニオン性界面活性剤、溶剤、消泡剤2種の10項目とした。類似の柔軟剤の開発経験のある他の研究者と協議し、目的変数に影響を与えやすいことが想定される説明変数のうち、酸化防止剤、アルデヒド系香料、高分子に注目した。これらの範囲設定を行い、他の説明変数は既製品と同様の値に固定して検討した。

結果:香気のベスト値の更新と目標達成の配合条件の獲得

獲得済みのデータを初期点として、「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチで、10点の候補点を算出し、その中で過去の実験条件と類似性の低い条件を3点選択して実験を実施した。2サイクル目も同様に10点の候補点を算出し、同様の方法で6点選択して評価を行った結果、外観変化、風合い、香気はいずれも3以上の処方を獲得した。官能評価の評点の最大化を期待して実験を継続し、3サイクル目でさらに6点の実験を行った。その結果、外観変化、風合いが3以上、かつ香気が4以上となる組み合わせを複数獲得した。また、先の組み合わせとは別に、風合いは3未満で合格点を満たさなかったものの香気が5となる配合条件も見出され、今後の香気に優れた新製品の開発における示唆を得た。