課題:官能評価を含む顧客要望へのスピーディーな対応

ファンデーションなどのメーキャップ用のクレンジング化粧料を開発している。データ数は22点あり、すでに有望な組成はいくつか見出している。塗布性、クレンジング力、洗い流し性能、濁度、なじみ、安定性は全て官能評価である。クレンジング力、洗い流し性能はパネラーによる評価、つまりその点数が目的変数となっている。一方、塗布性、濁度、なじみ、安定性は○×評価が目的変数となっている。機器による測定値として粘度とpHがある。すでに良好な組成を見出しているが、顧客の要望に合わせて組成を最適化するために組成の幅を持たせたいと考えている。

そこで、○×評価が全て○で、かつ各パネラー評価の点数が最大となり、研究者が見出せていない組み合わせの組成を複数見出し、要因分析を行い影響度の高い材料を特定することで、研究者の知見と組み合わせて顧客要望の性能に対してスピーディーに対応することが求められている。組成と各性能の関係性について要因分析に加えて、目的変数間についてもクレンジング力と洗い流し性能、また粘度とそれらの相関を見出したい。

解決策:ベイズ最適化による解析・実験と重要特徴量の把握

本テーマでは、まず「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチを用いてこれまでにない条件で良好な結果が得られる可能性について検討する。探索範囲は過去の実験データの最大値より10%から最大30%程度まで範囲を広げ、これまでにない領域も候補点として得られるようにした。また、制約条件として選択した材料の配合量が全体で100となるように設定した。導出される候補点は10点とし、その中から過去に実施していない、研究者の知見だけでは実験する可能性の低いものを選択して実験することとした。

「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチに基づいて実験したデータを追加して要因分析のため、予測モデルを構築することにした。予測モデルを構築し、精度指標で最も精度の高いものを選択した。重要特徴量を確認し、特にクレンジング力と洗い流し性能に影響する材料種を選定し、それら材料種の配合による目的変数の傾向を把握することにした。

結果:揮発性シリコーン油がクレンジング性能に与える傾向の把握

「ベイズ最適化の候補点から選択」のアプローチで10点の候補点を導出して研究者が想定しない2点の候補点を選択して実験した。結果、想定よりも良い結果を得た。
次に取得した実験点2点をマスターデータに追加して合計24点のデータセットで予測モデルを構築した。R2はいずれも0.5以上のものを選択し、比較的精度のある予測モデルを構築できた。クレンジング力ではLASSOを選択し、クレンジング力に正の影響のある揮発性シリコーン油1に注目した。また、洗い流し性能ではGP-Standardを選択し、影響度の高い5つを確認したところ揮発性シリコーン油1が含まれていた。
揮発性シリコーン油1の組成を段階的に変更した結果、増加するとクレンジング力も洗い流し性能も向上するが一定量以上では洗い流し性能が低下する傾向を確認した。それぞれの特性と粘度については傾向を把握することはできなかったが、粘度以外の物性値が関与していると仮説を立てて今後の検討を進めることとした。