2025年5月3日から5月5日までタイで開催される、AI分野で難関国際会議の一つである「Artificial Intelligence and Statistics (AISTATS) 2025において、MI-6機械学習リサーチチームが執筆した論文が採択されました。

AISTATS 2025で採択された論文の概要は、下記のとおりです。

(採択論文 1):Near-Optimal Algorithm for Non-Stationary Kernelized Bandits

著者:Shogo Iwazaki (MI-6 Ltd.), Shion Takeno (Nagoya University / RIKEN AIP)

概要:

材料開発における課題

材料開発では、製造プロセスの外部環境の変動や材料特性の経時変化を考慮しながら最適な条件を探索する必要があります。しかし、非定常な環境下では、目標関数が時間とともに変化するため、従来の最適化手法では適切な結果を得るのが難しい場合があります。このような状況では、動的に変化する環境に適応しながら効率的に探索を行う手法が求められています。

本手法のアプローチ

本論文では、非定常環境下でのベイズ最適化を効率的に実現するため、新しいアルゴリズムを提案しました。この手法は、フェーズエリミネーション(Phased Elimination, PE)をベースとし、ランダム順列処理をクエリ候補セットに適用することで、非定常環境に特化した信頼区間を構築します。これにより、従来の手法で課題となっていた計算コストを抑えつつ、累積リグレットの理論的保証を達成しています。また、時間変化する目標関数に対して適応的にリスタートを行い、非定常な条件下での最適化性能を高めています。

本研究は、非定常な環境下での材料探索を効率化するためのベイズ最適化フレームワークの構築に貢献します。

(採択論文 2)No-Regret Bayesian Optimization with Stochastic Observation Failures

著者: Shogo Iwazaki (MI-6 Ltd.), Tomohiko Tanabe (MI-6 Ltd.) ,Mitsuru Irie (MI-6 Ltd.), Shion Takeno (Nagoya University / RIKEN AIP), Kota Matsui (Nagoya University), Yu Inatsu (Nagoya Institute of Technology)

概要:

材料開発における課題

試行錯誤を繰り返す実験プロセスにおいて、合成失敗や観測不能な状況が頻繁に発生することが挙げられます。このような「観測が確率的に失敗する」環境下では、従来の最適化手法では理論的保証が示されておらず、実用的な性能が低下することが課題となっていました。実験コストや失敗確率が大きい材料開発においては、効率的かつ理論的に保証された手法が求められていました。

本手法のアプローチ

本論文では、「観測失敗を伴うベイズ最適化」においてNo-Regretを達成する初のアルゴリズムを提案しました。また、理論的保証の一部を緩和することで実務的な有効性を向上するアルゴリズムも同時に提案しています。これらのアルゴリズムは、それぞれリグレット上界(理論的保証)と実用性の間でトレードオフを持ちつつ、観測失敗を伴う状況下でも高い効率性を実現します。

本研究は、観測失敗や試行コストの大きい材料開発分野での最適化プロセスに貢献します。