はじめに
株式会社MORESCOは、研究開発部門のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の一環として、2022年からマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の検討・活用を開始しました。2024年現在は、潤滑剤・接着剤など、「物と物の間の境界領域に関する化学技術」において、効果的かつ迅速な研究開発のために、MIが有効であることを実感しています。
MI-6株式会社では、株式会社MORESCOの研究開発部 藤井満美子様と小西晋平様、特殊潤滑油事業部 機能材開発部 末吉祐介様に、MIの導入についてお話しいただき、ロングインタビュー記事として公開いたしました。
本記事では、本編の一部を抜粋してご紹介しています。
藤井 満美子
Mamiko Fujii
株式会社MORESCO研究開発部 研究開発課
ホットメルト型粘着剤の製品開発に従事した後、新規商品開発プロジェクトに携わり、製品からVOC(揮発性有機化合物)や臭気を取除くMORESCO独自の新技術を開発。現在は研究開発部において新規技術の応用展開とR&D部門へのDX推進に従事している。
末吉 祐介
Yusuke Sueyoshi
株式会社MORESCO特殊潤滑油事業部 機能材開発部
入社後水溶性切削油の開発や海外生産立ち上げなどに従事し開発現場を経験、現在は電子実験ノートの普及と管理・ラボオートメーション化による実験の自動化やソフトウェア開発を中心に活動しているR&D部門のDX推進チームと連携しMI推進を牽引している。
小西 晋平
Shinpei Konishi
株式会社MORESCO研究開発部 研究開発課
前職では化学メーカーにて、生産、開発、マーケティング、海外展開の業務に従事。2022年に人工知能科学修士号を取得し、同年、株式会社MORESCOへ転職。2023年よりMORESCOの重点プロジェクトの一つであるDX推進プロジェクトに参画しR&D部門でのMI推進とともに、全社的なDX推進戦略策定に取り組んでいる。
MI導入の背景と当初の進め方について
株式会社MORESCOでは、案件の増加やコロナ渦における在宅勤務の推奨などに起因して、2020年頃より十分な実験数の確保が難しくなったことから、製品開発の効率化のために、「研究開発DX」と「MI」に取り組んでいます。
取り組み当初は、アルゴリズムを含む勉強会を1年程続けましたが、「知識を自身の実験でどのように活用すべきかがイメージできず、行き詰まりを覚えていた」という声が挙がりました。そこで、SaaSを活用する方針へと舵を切り、アウトプットを意識した勉強会に変更しました。その中で、解析・配合試作も含めてMIを実践することにより、機械学習の優位性を確認することができました。
その一方で、当時は解析者と開発者を分けた取り組みを行っていたため、データの受け渡しや解析結果の説明など多くのやりとりが発生していました。そのため、このままMIを日常業務に落とし込んだとしても、本当の意味での効率化は達成できないと感じていました。また、開発者がモチベーションを維持し主体的に実験を進めていくためにも、開発者本人が解析を行うことが重要だと考えたと、小西様は語っています。
研究開発者自身がMI解析を行えるように
MIツールの比較検討の過程で、miHub®︎のデモンストレーションを見たところ、「研究開発者自身がMI解析を行えるように」という意図が明確で、専門的な知識をシンプルで使いやすいUIに落とし込んでいることが分かりました。現場の開発者に近い感覚を有する藤井様は、解析以外の業務の多忙さを理解していることから、「現場の開発者は、ここまでツール側が寄り添ってくれないとみんなが使えない」と考えました。
現在は、miHub®︎と他の解析ツールについて、得意領域を鑑みて使い分けています。開発者は直感的に操作できるmiHub®︎を用いて実験計画を進め、データサイエンティストは専門的なスキルを活かして他の解析ツールを活用しているとのことです。
MI活用の効果例
本編では、下記の効果についてお話しいただいています。
- 効率化だけでなく、実験の質の向上でも効果を実感している。
- 自身の解析を通じて得た配合について、「この材料が効いている」「この物性が効いている」と確認し、次の施策に繋げる流れが生まれた。
- MIによって見出せた配合から良い成果が生まれるなど、新たな発見があった。
MI活用への熱意
株式会社MORESCOの取り組みの中には、製品開発という仕事をもっと面白いものにしたい、という強い思いが根底にあります。MIを活用して単に業務を効率化するのではなく、開発者がチャレンジングなテーマに取り組み、自己成長を実現することに繋げていってもらえれば、と最後に小西様からお話しいただきました。
いかがでしたでしょうか。本編では、本記事に掲載している内容を、更に詳しく藤井様・小西様、末吉様が語ってくださっています。3分動画もありますので、ぜひご覧ください。