はじめに
ナガセケムテックス株式会社は、化学製品の開発・製造を手がけ、特に高機能材料の研究開発に力を入れています。伏木様、櫻井様が所属する製品開発部では、市場競争の激化に伴う開発サイクルの短期化と、データ活用に対する課題を抱えていました。2021年にマテリアルズ・インフォマティクス(MI)導入の検討をはじめ、同年にMI-6の提供する、Hands-on MI®のサービスを導入いただきました。伏木様、櫻井様はMIを活用することで、過去10年間成果が得られなかったテーマにおいて、たった半年で成果をあげることに成功しました。
伏木 將人
Masato Fushiki
ナガセケムテックス株式会社機能化学品事業部 製品開発部 機能性コーティング課 課長 (Hands-on MI®導入時)
Hands-on MI®導入時、機能化学品事業部の製品開発部の開発マネージャーとしてチームを牽引。入社以来、有機合成および配合技術を用いた製品開発に従事し、現在は営業マネージャーとして製品販売の推進・戦略立案に携わっている。
櫻井 隆裕
Takahiro Sakurai
ナガセケムテックス株式会社機能化学品事業部 製品開発部 機能性コーティング課 (Hands-on MI®導入時)
Hands-on MI®導入時、機能化学品事業部の製品開発部にてコーティング剤の製品開発に従事。入社以来、重合および配合技術を用いた製品開発に従事し、現在は製品全般の品質保証業務を担当している。
今回MI-6は、ナガセケムテックス株式会社の伏木様、櫻井様に、MIの導入についてのインタビューをいたしました。インタビュー本編は、MI-6のコーポレートサイトにご紹介していますので、そちらもぜひご覧ください。
本記事では、本編ではご紹介できなかった伏木様、櫻井様のお話をご紹介いたします。
MI導入の経緯と選定理由
伏木様、櫻井様が所属されている製品開発部は、新製品の開発を担い、コーティング剤のカスタマイズや材料開発を担当されています。MI導入以前は、年々激化する業界競争の中で、製品の性能を大きく向上させることができていないこと、さらに蓄積されたデータを十分活用できていないことに強い課題感をお持ちでした。これらの課題を解決するためにMI導入を決めました。MI導入にあたっては、知見を持つ専門家によるサポートが重要だと考え、MI-6のHands-on MI®を選定されました。サポート体制や、実際の開発プロジェクトでのMI活用における伴走支援が期待できる点が決め手となったとのことです。導入経緯の詳細については、ぜひ本編もご覧ください。
MI導入当初について〜本編では語られなかった導入時の思いについて〜
前述したような課題感をお持ちの中で、伏木様は「MIを使えば、自社の課題が解決できるのではないか?」と考え、検討の一歩を踏み出しました。当時は、MIに対してまだ確信的なものがあったわけではなく、「これを使えば必ずうまくいく」と思ったわけではありませんでした。あくまで「これを試してみたらどうだろう?」という漠然とした期待感があったとのことです。
すでに多くの企業でMIの活用が進んでいることは認識していた一方、自社でそれを導入して本当に効果があるのかどうかについては、当時は自信がありませんでした。何より、MIの専門知識を持つ人材が社内にはいなかったため、最初はどう活用していけばよいのか、まったく見当がつかなかったそうです。「MIを使うと、これまで達成できなかったことができるんじゃないか」と感じながらも、それが本当に実現できるかどうかには疑念もあったと当時の心境を語ってくださいました。特に、社内にノウハウがない状態でソフトウェアを導入することが、かえって遠回りになってしまうのではないかという不安もあったそうです。この不安を解消するためには、専門家と一緒に進められるサービスが必要という考えに至りました。
伏木様は当時「MIを導入しなければ、競合に先を越されてしまう」という強い危機感をお持ちでした。もし、競合企業が先にMIを導入し、その技術を活かしてどんどん成長していったら、追いつけなくなってしまうかもしれない。だからこそ導入しなければならない、と強く思うようになりました。
そのような中、MI-6のHands-on MI®を課内で検討した際、周囲からの「やってみよう!」という声や、ナガセケムテックスの現場でやりたいことを後押しする社風も手伝い、導入を決意されました。
しかし、導入がもしうまくいかなかった場合、社内に「MIは失敗する」といったネガティブなイメージが広がり、逆に導入が遅れてしまうのではないか、という懸念が当時はあったそうです。そのため、導入当初は周りには喧伝せずにまずは小さな成功を目指し、そして必ず最初から成功例にしたいという強い思いもあったと語っていました。
MI導入当初の社内の担当者について、伏木様は成功するかどうか不安がある中で前向きに取り組んでくれる方に任せたいと考えていました。そこで、開発者としての能力も高く、更に前向きに取り組む強い期待も持てる櫻井様をアサインされたそうです。
MI導入後の取り組み〜本記事では語られなかったご苦労について〜
インタビューの中で、伏木様と櫻井様は、MI導入初期に抱いていたMIに対する過剰な期待について言及されました。MI導入初期は、すぐに良い材料が見つかるという期待があったとのことです。しかし実際には、一度では満足できる結果は得ることが出来ず、あまり頼りにならないのかもしれない、と感じたこともありました。
特に、導入初期はMIが提案する材料がこれまでの経験上納得できない場合が多く、不安に感じられたそうです。このような不安を解消するために、MI-6のデータサイエンティストと何度もディスカッションを重ね、特徴量の設定やデータ整理を見直す重要性に気づきました。最終的に、MIの提案を改善していくことに成功しました。
その結果、10年以上も成果が得られなかったテーマにおいて、たった半年間で3種類の新しい高性能添加剤を発見することができました。更にこの成果は特許申請にも繋がり、将来的には新製品の開発に大きく貢献する見込みです。研究員の間で、MIだけではなくAIに対する関心も非常に高まったと嬉しそうにお話されていました。
最後に〜これからMIを導入する方へ〜
お二人は、MIを「日常的なツール」として使いこなすために、社内全体の理解と体制づくりが重要であり、そのためには「小さな成功を積み重ねる」ことが成功への鍵となる、と最後にメッセージをいただきました。成功体験を積み重ねることで、社内全体の理解が深まり、導入そして推進がスムーズに進むとのことです。
そしてMI導入に対するアドバイスとして、「まずは試してみること」と「サポートを活用しながら進めること」を勧めていました。初めてMIを使う場合は、専門家のサポートにより途中で挫折せずに続けられる可能性が高いと強調していました。
いかがでしたでしょうか。MIを研究開発のアプローチとして根付かせていくために少しでも役立つ情報を共有できていれば幸いです。
本編では、実際の取り組みの進め方や成果について、より詳細にご紹介しています。ぜひ一度ご覧ください。