はじめに

国内外で競争が激化し、製品ライフサイクルも短期化するなか、住友ベークライト株式会社は、研究開発の効率化・高度化が求められ、データ活用による新たなアプローチが必要とされていました。そのような背景から、従来の開発方式に加えてマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を導入する運びとなりました。

MI-6は、住友ベークライト株式会社の野﨑 隆二様、畑尾 卓也様、長島 大様に、MIの導入についてのインタビューをいたしました。インタビュー本編は、MI-6のコーポレートサイトでご紹介していますので、そちらもぜひご覧ください。

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野﨑 隆二

Ryuji Nozaki

住友ベークライト株式会社コーポレートエンジニアリングセンター センター長 常務理事

工場生産技術部で設備開発改善/建設/エネルギー供給に従事し、2013年より現部署にて既存各事業と新事業にソリューションを提供。近年は人手不足や熟練技術者の高齢化を解決すべく、生産ラインのデジタル化・論理制御を推進。研究開発領域においては、MI導入など研究者がより効果的に研究開発に取り組める環境づくりを進めている。

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畑尾 卓也

Takuya Hatao

住友ベークライト株式会社コーポレートエンジニアリングセンター MI推進部 部長

半導体パッケージ用材料の信頼性評価解析技術の開発に従事した後、2020年にコーポレート部門でデータ駆動型開発を推進するワーキンググループを立ち上げ、2022年にプロジェクト化。現在はMI推進部で、MI技術実践による各研究所の課題解決支援や先進的なインフォマティクス技術の導入を進めている。

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長島 大

Dai Nagashima

住友ベークライト株式会社コーポレートエンジニアリングセンター MI推進部 主幹

主にシミュレーション技術を用いた特性発現機構の解明による製品開発支援業に従事。有用な技術導入を進める過程で、機械学習をはじめとするインフォマティクス技術を取り入れたデータ分析を行うように。2020年からは、データ駆動型の製品開発を実現するための研究データ基盤の構築や人材育成の社内プロジェクトに携わる。

MI導入の成果

MIによって、複数特性を同時最適化する必要がある複雑な材料開発プロセスが大幅に効率化されました。初期スクリーニングの段階から実験候補数を大幅に削減でき、トレードオフの関係にある特性についてもバランスの良い最適解を導き出すことが可能です。これにより開発スピードが向上しただけでなく、「データ活用によって、従来難しかったことも実現できる可能性がある」という新たな認識が社内に生まれ、研究開発の進め方そのものを見直す契機とされました。

MI推進に向けた組織体制づくり

もともと有志で進めていたMIワーキンググループはプロジェクトチームへと発展し、2024年にはMI推進部が新設されました。経営層は、MI導入を短期的な投資対効果だけで判断せず、中長期的な競争力維持・強化の観点から支持しており、各研究所との合意形成もスムーズに進められました。全社横断的な取り組みによって、共通基盤のデータ環境整備や、研究者がMIに取り組みやすい体制づくりを着実に推進されています。その際のエピソード詳細については、本編でお話いただいていますので、ぜひ一度ご覧ください。

今後の展望

今後は、研究者が自らMIを活用し、研究開発プロセスに自然と組み込む段階を目指しているとのことです。そのために、データサイエンティストの増員や高度なMI技術の導入、人材育成を含む体制強化が進められています。最終的には、MIを「当たり前の技術」として定着させることで、継続的な競争力向上と研究開発基盤の強化に繋げていく方針を掲げておられます。


本編記事では、MIを導入することで実験工数削減や試作回数の低減を実現できただけではなく、試作検討までに得た研究データを、これまで以上に有効に活用できた点についても具体的にお話しいただきました。今後、組織全体でMIを本格的に展開したい方や、複数の特性を同時に最適化する材料開発に課題をお持ちの方、手堅い改革を進めたい方におすすめの記事です。

ぜひご一読ください。