はじめに

大塚化学株式会社は、化学素材メーカーとして、急速に進化する市場のニーズに対応するため、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を積極的に導入しています。研究開発部門を担当する大薗様のお話では、MI導入前は「知識、経験、勘」に大部分で頼り、製品開発に時間がかかりすぎるという課題を持たれていました。また、環境規制の強化やグローバル競争の激化により、製品開発のスピードと精度を向上させる必要性も高まっています。それらの課題を解決するため、MI導入に至りました。

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大薗 慎二

Shinji Oozono

大塚化学株式会社IT企画部 MI推進室 室長 (兼) 研究開発本部 技術戦略室 専任課長

化学物質の安全性評価や、医薬品市場向けの機能性中分子化合物の開発等に従事し、その後、技術戦略の策定を担う部署にて、戦略立案と実行のための基盤作りに奔走。
経営企画部に異動後は、事業戦略の実行支援・顧客との協業推進・中期経営計画策定等に携わる。
2019年にMI導入判断を最大のミッションとしたMI準備室の立ち上げを行い、2022年にMI推進室に改称。現在は、MIの更なる活用推進を行うと同時に、研究開発部門におけるDX構想の立案を進めている。

MI導入の背景と活用方法について

大薗様は、MI導入を検討していた2020年当時、「複数の物性値を同時に満たす材料を開発してほしい」というお客様からのご要望が急増し、それに応えるため、複数の目的変数を同時に最適化できるツールを探していました。単一の目的変数を最適化するツールが数多くある中、複数の目的変数を最適化することが出来るmiHub®の導入を決めました。

導入当初は、大塚化学の社内にMIに関する専門知識が十分ではなかったため、MI-6のデータサイエンティストと大塚化学の研究員が密接に連携して解析を進める事が出来るような体制も整備しました。その際のエピソードは本編でお話しいただきました。

MI導入後の成果と工数削減

MI導入後、開発期間を大幅に短縮することに成功しました。従来の開発プロセスでは、数ヶ月から半年かかっていた開発が、MIによってその期間は半分に短縮しました。さらに、新たな案件で過去のデータの再利用が可能になったことで、2サイクル目で目標物性に到達するという成果も得られました。過去の実験データを次の開発に生かすことで、目標達成までの時間を大幅に短縮していった具体的な話を、本編ではご紹介しています。

社内の反響と今後の展望

MI導入の結果について、大塚化学社内では非常に高い評価が寄せられました。特に、研究者からは「データサイエンティストとの共同作業を通じて、未知の領域に踏み込むことができるようになった」という声が多かったそうです。データ分析の結果に基づいて新たなアイデアを得ることができる点について、特に高く評価されていました。また、大塚化学では今後、社内外のデータを活用した「データエコシステム」の構築を目指しています。これにより、お客様とのデータ共有を活発に行い、より効率的に材料開発を進めるとともに、業界全体の競争力向上にも寄与したいと考えられています。

MI活用組織の構築とアドバイス

最後に、MI組織の立ち上げについて重要なポイントをお話しいただきました。MIは短期的な成果を求めるのではなく、長期的な取り組みとして技術とノウハウを蓄積していく必要がある点をわかりやすくお話しいただきました。

本編記事では、大薗様が更に詳しく語ってくださっています。研究開発の効率化を図りたい方、開発スピードを短縮したい方、複数の物性を同時に最適化する材料開発に課題を抱えている方、研究者とデータサイエンティストの協力による効果的なデータ活用の方法を学びたい方におすすめの記事です。